親不知4本同時抜歯入院日記~プロローグ~
「とりあえず、先に親不知抜いちゃいましょう。今治療してる歯は、その後で治療しましょうねー。穴が埋まるまで、どっちみち治療はできないですしね。うちの歯科では無理なんで、専門の病院の先生に紹介状書いておきますねー^^」
歯科医にそう告げられたのは、右奥の虫歯を抜歯した日のことだった。
私の親不知は横から生えており、噛み合わせが出来ないため存在する意味が全くなく、しかも変な生え方をしているせいで磨き残しがどうしても発生してしまうため歯周病に一歩手前というところまで来てしまっており、つまりはそうとう酷い状態で、治療の度に「そろそろ抜きましょうか」「これ、このまま置いていて更に悪くなる可能性はかなり高いけど、良くなる可能性は0%ですよ」などと半ば脅されまくっていたのだが、とにかく怖いので「うーん、治療が終わってからにしようかな~」などとのらりくらりとかわしていたのである。
そしてついに歯科医の口から冒頭の発言が出た。
意訳は「抜かねーと治療しねーぞ」である。
さすがに三十路を超えて「怖いからイヤ」とか言えないし、歯科医のいう通り、抜かずに置いておいても悪化する一方なのは紛れのない事実。
そして、個人的な話になっちゃうけど、私の両親はどちらも総入れ歯だ。
私はそんな歯の弱い二人のサラブレッド。
どっちみち抜かないといけない。もう腹をくくるしかない。
私はちびらないようにトイレをしっかりと済ませた後で、専門の先生がいらっしゃる総合病院の歯科口腔外科の門をたたいた。